2022.03.12
「ひとはなぜ戦争をするのか」
アインシュタインの手紙での問いに、フロイトが返事を書きました。
20世紀を代表する物理学者と心理学者が書簡を交わしていたのです。
この書簡が交わされた翌年、ナチス政権が生まれ、ユダヤ人を追い詰めます。
アインシュタインもフロイトもユダヤの血を引いていたため、ナチスの魔の手が伸びます。
アインシュタインはアメリカに、フロイトはイギリスにそれぞれ亡命しました。
世紀の戦争論はナチズムに握りつぶされたと、と言っても過言ではありません。
1932年、アインシュタインは国際連盟から、人間にとってもっとも大事だと思われる
問題を取り上げ、もっとも意見を交換したいと相手と書簡を交わすという
プロジェクトを持ちかけられました。アインシュタインが選んだテーマは「戦争」、
意見交換の相手はフロイトです。当時、アインシュタインは53歳、フロイトは76歳でした。
アインシュタインはフロイトに問いかけます。
「人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?」
フロイトはアインシュタインに宛てて返信します。結びの言葉は、
「文化の発展を促せば、戦争の終焉に向けて歩みだすことができる!」
フロイトによれば、文化は欲動の発動自体を抑えるはたらきがあるといいます。
平和憲法を戴く私たちの「文化」は戦争を抑止しうるのでしょうか。
参考書籍:「ひとはなぜ戦争をするのか」講談社学芸文庫
Albert Einstein、Sigmund Freud、浅見昇吾 訳