城南コベッツ横浜六浦教室

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横浜六浦教室のメッセージ

枕草子第24段「おひさきなく」~清少納言の宮仕え観

2024.04.09

おひさきなく、まめやかに、えせざいはひなど見てゐたらむ人は、
いぶせくあなづらはしく思ひやられて、なほさりぬべからむ人の娘などは、
さしまじらはせ、世の有様も見せ習はさまほしう、内侍(ないし)のすけなどにて
しばしもあらせばや、とこそおぼゆれ。
宮仕する人を、あはあはしうわるきことにいひおもひたる男などこそ、いとにくけれ。
げにそもまたさることぞかし。かけまくもかしこき御前をはじめ奉りて、
上達部(かんだちめ)・殿上人、五位・四位はさらにもいはず、
見ぬ人はすくなくこそあらめ。女房の從者(ずさ)、その里より來る者、
長女(おさめ)・御厠人(みかはやうど)の從者、たびしかはらといふまで、
いつかはそれをはぢかくれたりし。殿ばらなどは、いとさしもやあらざらん、
それもあるかぎりは、しかさぞあらむ。
うへなどいひてかしづきすゑたらんに、心にくからずおぼえん、ことわりなれど、
また内裏(うち)の内侍のすけなどいひて、をりをり内裏へまゐり、
祭の使などにいでたるも、おもだたしからずやはある。さてこもりゐぬるは、
まいてめでたし。受領の五節(ごせち)いだすをりなど、いとひなびいひ知らぬことなど、
人に問ひききなどはせじかし。心にくきものなり。

【現代語訳】
将来にたいした希望もなく、夫の出世などを願い、ひたすら家庭をまもっているような、
形だけの幸せを求めている女性は、うっとうしくて、軽蔑したくなるように思われて、
やはり相当の身分の人の娘などは、宮仕えさせて、世間の様子も見習わせさせたい、
内侍の典侍などに少しの間でもつかせたいと思われる。
宮仕えをする女性を、軽薄で悪いことだと言ったり思ったりする男は、たいへん憎たらしい。
しかし、それはもっともなことなのかも知れない。口にするのもおそれ多い天皇さまや
中宮さまをはじめとして、上達部・殿上人、五位・四位は言うまでもなく、
宮仕えする女性が知らないままでいる人は少ないでしょう。
女房の従者、実家から来る者、長女・御厠人の従者、卑しい人たちまで、
いつ、顔を合わせるのを恥じて隠れたりすることがあったでしょうか。
殿方などは、まったくそうではないでしょうか。
殿方も宮仕えする限りは、誰とでも顔を合わせるでしょう。
奥方さまなどと言って大切にお仕えする場合に、おくゆかしくないと思われるのは
もっともだけれども、やはり内裏の内侍のすけなどといって、時々内裏に参上し、
祭の使いなどに加わったのも名誉でないことがあろうか。宮仕えした後に
家庭に落ち着くのは、いっそう素晴らしいことだ。受領が五節の舞姫を奉る折に、
とても田舎びて、言うに足らぬころ、人に聞きはしないでしょう。おくゆかしいものである。