横浜六浦教室のメッセージ
ありがたきもの~「枕草子」第七十五段から
2026.03.14
ありがたきもの。
舅にほめらるる壻。また、姑に思はるる嫁の君。
毛のよく抜くるしろがねの毛抜き。主そしらぬ人従者。
つゆの癖なき。かたち・心・ありさますぐれ、世に経る程、いささかのきずなき人。
おなじ所に住む人の、かたみに恥ぢかはし、いささかのひまなく用意したりと思ふが、
つひに見えぬこそ難けれ。
物語・集など書き写すに、本に墨つけぬ。
よき草子などは、いみじう心して書けど、かならずこそきたなげになるめれ。
をとこ・女をばいはじ、女どちも、契りふかくて語らふ人の、末までなかよき人かたし。
【現代語訳】
めったにないもの。
舅(しゅうと)にほめられる婿。また、姑(しゅうとめ)にほめられるお嫁さん。
毛がよく抜ける銀の毛抜き。主人の悪口を言わない使用人。
全然欠点のない人。顔立ち・心・ふるまいも優れていて、ずっと世間で人付き合いをしてきて、
ほんの少しの非難も受けない人。
同じ仕事場で働いている人で、互いに礼をつくし、少しの油断もなく気を遣い合っている人が、
最後まで本当のところを見せないままというのもめったにない。
物語や和歌集などを書き写す時、元の本に墨を付けないこと。
上等な本などはとても気を付けて写すのだけれど、必ずといっていいほど汚してしまうようだ。
男と女とはいうまい、女同士でも、関係が深くて親しくしている人で、
最後まで仲が良いことはめったにない。






