東船橋教室のメッセージ
算数・数学の後期学習の肝は"図形"
2025.09.19

数学は、単なる計算の学問ではありません。
それは、論理的な思考力、問題解決能力、そして物事を多角的に捉える力を養うための重要なツールです。
そして、その中でも特に、図形は算数・数学の後期学習において、その学習の成功を左右する鍵となります。
なぜ図形は後期学習の鍵なのか?
算数・数学は、小学校から中学校、高校へと進むにつれて抽象度を増していきます。
小学校で習う「計算」や「単位」は、具体的な数字や量でイメージしやすいものですが、中学生になると「方程式」や「関数」といった、目に見えない関係性を扱うようになります。
ここで、図形の学習が重要になってきます。図形は、抽象的な概念を視覚化する最高のツールです。例えば、文字と数字が並ぶだけの複雑な式も、グラフとして描くことで、その関係性を一目で理解することができます。方程式の解がグラフの交点であることを知れば、単なる計算問題だったものが、より視覚的で意味のあるものに変わります。
さらに、図形は論理的思考を鍛えるのに最適です。三角形の合同や相似、証明問題は、与えられた条件から結論を導き出すための論理的なステップを組み立てる練習になります。これは、将来、どのような分野に進んだとしても必要となる、筋道を立てて考える力の基礎を築くのです。
図形が苦手な子が増えているのはなぜか?
近年、図形を苦手とする子供たちが増えていると言われています。その背景には、いくつかの理由が考えられます。
1. 生活様式の変化
昔は、積み木やブロック、折り紙など、実際に手で触れて空間を認識する遊びが一般的でした。しかし、現代はデジタルデバイスが普及し、二次元の画面で情報に触れる機会が増えています。
これは、子供たちが立体的な空間を認識し、イメージする機会の減少につながっている可能性があります。図形の問題を解く際には、頭の中で図形を回転させたり、異なる角度から眺めたりする能力が求められますが、この「空間把握能力」が育ちにくい環境になっているのかもしれません。
2. 計算偏重の教育と指導
一部の教育現場や塾では、計算の速さや正しさを重視し、公式を暗記して問題を解くことに注力しがちです。確かに計算力は大切ですが、それだけでは図形の問題に対応できません。
図形の問題は、公式を覚えるだけでは解けず、「どうしてそうなるのか」という原理を理解し、それを応用する力が求められます。しかし、計算偏重の指導では、その「思考プロセス」を飛ばしてしまうことが多く、結果的に図形の本質的な理解がおろそかになりがちです。
3. 教材の工夫不足
教科書や参考書は、二次元の紙面で図形を表現しなければなりません。立体的な図形を二次元で表現する場合、どうしてもその奥行きや立体感が伝わりにくくなります。
このギャップを埋めるには、先生や保護者が、実際に身の回りのものを例に挙げたり、具体物を使って見せたりするなどの工夫が必要です。例えば、家にあるティッシュの箱や空き缶などを使って
「これが円柱だよ、この横から見た形は長方形だよ」と教えるだけで、子供たちの理解は格段に深まります。しかし、そのような工夫が十分に行われていないケースも見受けられます。
4. 早期教育の弊害
「早期教育」と称して、まだ空間認識能力が十分に育っていない幼少期から、複雑な図形や公式を詰め込もうとする動きもあります。
これは、子供たちが図形を「難しい、つまらないもの」と認識してしまう原因になりかねません。
図形は、本来、身の回りにある様々な形や模様を発見し、楽しむところから始まるものです。無理に早期から詰め込むのではなく、まずは遊びを通して図形に親しみ、興味を持たせることから始めるのが理想的です。
図形を得意にするためのアプローチ
では、どうすれば子供たちは図形を得意にできるのでしょうか。
1. 日常生活で図形に触れる機会を増やす
「あれは三角形の屋根だね」「あの看板は長方形だ」など、身の回りのものを使って、図形の名前を口にする習慣をつけましょう。遊び道具も、デジタルゲームばかりではなく、ブロックやパズル、折り紙、そして公園の遊具など、実際に手で触れられるものを選ぶと良いでしょう。
2. 図形を「見る」練習をする
複雑な図形でも、シンプルな要素の組み合わせとして捉える練習をします。例えば、一見複雑な多角形も、いくつかの三角形に分割して考えることができます。また、立方体や円柱などの立体は、上から、横から、前から見た形がどうなるかを想像する練習も有効です。
3. 「なぜ」を大切にする
公式を丸暗記させるのではなく、「なぜその公式で面積が求められるのか」「なぜこの図形とあの図形は合同なのか」といった「なぜ」を常に問いかけ、一緒に考える姿勢を大切にしましょう。
図形は、論理的な思考と空間認識能力を養う、まさ*算数・数学の「土台」です。この土台がしっかりしていれば、その上にどんなに複雑な概念が乗っても、崩れることはありません。
記事まとめ
数学という広大な世界を旅する上で、図形は地図であり、羅針盤です。抽象的な思考を視覚的に捉える力を養い、論理的な思考力を鍛える上で不可欠な存在なのです。現代社会の変化や教育のあり方が、子供たちから図形に触れる機会を奪い、苦手意識を植え付けてしまっている側面があるかもしれません。
しかし、日常生活の中で意識的に図形に触れ、「なぜ」を考える習慣をつけることで、子供たちは必ず図形の面白さに気づき、算数・数学全体の学習をスムーズに進めることができるでしょう。






