東船橋教室のメッセージ
私立高校無償化の実態調査 進路への影響と見落としがちな費用負担
2026.04.21
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※この記事は、明光義塾の調査をもとに作成しています。
近年、日本の教育政策において大きな転換点となっているのが
「私立高校授業料の実質無償化」です。
2020年4月から実施されている「高等学校等就学支援金制度」の拡充により、
年収目安が約590万円未満の世帯を対象に、私立高校の平均授業料相当額(最大39万6,000円)が
支給されるようになりました。
さらに、東京都などの自治体では、2024年度から所得制限を撤廃して独自に無償化の範囲を
広げる動きも加速しています。
特に
「進路決定への影響」
「家計の軽減額」
「制度の課題」
の3点に焦点を当て、その実態を見てみましょう。
◇進学先の決定に与えた影響◇
【調査結果】
「私立高校への進学決定に、私立高校無償化制度はどの程度影響したか」という問いに対し、
56.9%が「影響した」
(非常に大きく影響した:25.1%、ある程度影響した:31.8%)
と回答しています。
【背景と考察】
これまで、日本の高校進学においては「経済的理由で公立を第一志望にする」という選択が
一般的でした。
しかし、このデータは、
無償化制度が「私立を選択肢に入れるための最大のハードル(学費)」を大幅に下げたこと
を証明しています。
実際に、もし無償化制度がなかった場合にどうしていたかという問いでも、
約3割が「公立に進学した可能性が高い」としています。
これは、制度が導入される前であれば、私立特有の独自の教育カリキュラムや施設、
大学進学実績に魅力を感じていても、経済的な制約から断念せざるを得なかった層が、
制度によって「本当に行きたい学校」を選べるようになったことを示唆しています。
◇年間での軽減額の実感◇
【調査結果】
「私立高校無償化制度により、年間で軽減される予定の授業料額(見込み)はどの程度か」
という問いでは、
「35万円以上」と回答した割合が約4割(40.6%)に達しています。
内訳は「35万円以上45万円未満」が20.4%、「45万円以上」が20.2%となっています。
【背景と考察】
この「35万円以上」という数字は、
国の就学支援金の上限額である39万6,000円(私立高校の平均授業料水準)と合致しており、
多くの家庭で制度の恩恵が最大限に活用されていることが分かります。
しかし、注目すべきは
「軽減額がわからない」と回答した割合が36.0%も存在する点です。
これには以下の理由が考えられます。
①制度の複雑さ
世帯年収(住民税の課税状況)によって支給額が細かく分かれるため、
正確な金額を把握しにくい。
②支給時期のズレ
後述する「立て替え」の問題にも関連しますが、授業料の請求が先に来て、
還付が後になるため、実質的にいくら得をしたのかが直感的に分かりにくい。
私立高校の学費は授業料以外にも「施設維持費」や「教育充実費」といった項目が含まれており、
それらは無償化の対象外です。
そのため、「授業料は無料になったが、トータルの支払いは依然として少なくない」という感覚が、
金額の不透明感に拍車をかけている可能性があります。
◇制度の課題◇
【調査結果】
「私立高校無償化制度の課題だと感じる点」では、以下の回答が上位に挙がっています。
第1位:授業料以外は対象外(42.7%)
第2位:学費上昇を招いている可能性(24.2%)
第3位:立て替え負担がある(20.4%)
第3位(同率):制度内容が分かりにくい(20.4%)
【背景と考察】
この結果から、保護者が「無償化」という言葉に対して抱いていた期待と、
現実の負担との間に大きなギャップがあることが浮き彫りになりました。
「隠れたコスト」の重圧
制服代(約10〜15万円)、教科書代、修学旅行の積み立て、タブレット端末代、
通学定期代など、入学前後には授業料以外に数十万円単位の費用が発生します。
調査では初期費用の約半数が30万円以上と回答しており、
「授業料が無償になっても、入学のハードルは依然として高い」
というのが現状です。
「立て替え負担」の問題
就学支援金は学校に直接振り込まれる「相殺型」が増えていますが、
申請期間や審査の都合上、
初年度の第1期分などは一旦保護者が全額支払い、後で返金されるケースが少なくありません。
貯蓄が十分でない家庭にとって、この「一時的な数十万円の出費」は死活問題となります。
学費のインフレ懸念
無償化によって私立高校への需要が高まった結果、学校側が施設拡充などの名目で
「授業料以外の費用」を引き上げているのではないか、という疑念(学費上昇の可能性)も
保護者の間で広がっています。
この調査から見えるのは、
私立高校無償化制度が「進路の自由度を広げた」という大きな功績を持つ
その一方で、
「実質的な家計負担の解消にはまだ距離がある」
というシビアな現実です。






