横浜六浦教室のメッセージ
あさましきもの~枕草子第九七段より
2026.04.30
あさましきもの。指櫛(さしぐし)すりて磨く程に、ものにつきさへて折りたる心地。
車のうちかへりたる。さるおほのかなるものは、所せくやあらんと思ひしに、
ただ夢の心地して、あさましうあへなし。
人のためにはづかしうあしきこと、つつみもなくいひゐたる。
かならず来なんと思ふ人を、夜一夜起きあかし待ちて、暁がたにいささかうち忘れて寝入りにけるに、
烏のいと近く「かか」と鳴くに、うち見あげたれば、昼になりにける、いみじうあさまし。
見すまじき人に、外(ほか)へ持て行く文見せたる。むげに知らず、見ぬことを、人のさしむかひて、
争(あらが)はすべくもあらずいひたる。物うちこぼしたる心地、いとあさまし。
【現代語訳】
驚きあきれるもの。指櫛をこすって磨くうち、物にぶつかって折れた(時の)気持ち。
牛車がひっくり返ったもの。これほど大きなものは、どっしりしているだろうと思ったが、
(ひっくり返ってしまうと)ただ夢のような気がして、驚きあきれてどうしようもない。
当人に対して、きまりが悪くいやなことを、遠慮もなく言っていること。
必ず来るだろうと思う人を、一晩中起きて待っていて、明け方にちょっと忘れて寝入ったときに、
烏(カラス)がたいそう近くで「かあかあ」と鳴くので、ふと見上げたら、
昼になってしまっていた(ことなど)、たいそう驚きあきれる。
見せるべきではない人に、他へ持って行く手紙を見せている(こと)。
まったく知らず見もしないことを、人が、面と向かって、一方的に言っている(こと)。
何かをこぼした(時の)気持ち、たいそうがっかりする。






